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2007年07月05日

鵺(ぬえ) と 牛鶴鰻毛人(ニウホーマンマオレン)

らんま1/2 18.02 悪魔の正体 高橋留美子 小学館
ranma18.02.jpg

パンスト太郎は、八宝斉に産湯につけられたのですが、しかしそこが、

鰻と鶴を持って牛に乗った雪男が溺れたという、呪泉郷史上最悪の悲劇的伝説である、牛鶴鰻毛人(ニウホーマンマオレン)

だっために、悪魔のような姿になってしまいます。このように、色々な動物が混ざりあっている怪物は、色々あると思いますが、日本で最も有名なのは、鵺(ぬえ)という怪物だと思います。

うる星やつら ワイド版 04.11 平安編 参の巻 高橋留美子 小学館
uruseiyatsura04.11.jpg
ぬーちゃん は、鵺(ぬえ)の「ぬーちゃん」なのだと思います。

広辞苑で、鵺(ぬえ)の項を見てみると、

源頼政が紫宸殿上で射取ったという伝説上の怪獣。頭は猿、胴は狸、尾は蛇、手足は虎に、声はトラツグミに似ていたという。平家物語などに見え、世阿弥作の能(鬼物)にも脚色される。

と書かれています。これは広辞苑に限らず、ほとんどすべての辞書で同じように書かれているのですが、しかしこれは、正確性を欠いた説明ではないかと思います。

「平家物語 四巻 十三 鵺の事」 を見ると、源頼政は、二度化物退治をしているのですが、第一回目は、仁平(1151〜1154)の頃であり、そしてこの化物の描写を見ると、

頭は猿、躯(むくろ)は狸、尾は蛇、手足は虎の如くにて、鳴く声 鵺(ぬえ)にぞ似たりけり。

註:源平盛衰記では、
頭は猿 背は虎 尾は狐 足は狸、音は鵺也。

とあります。最後の「鳴く声 鵺(ぬえ)にぞ似たりけり。」という一文からすると、この化物は、声が鵺に似ているというだけで、「鵺」という化物ではないのです。そしてこの化物には名前はありません。

それからおおよそ10年後、応保(1161〜1163)の頃に、頼政は、第二回目の怪物退治をします。その怪物の描写を見てみると、

鵺(ぬえ)という化鳥(けちょう)、禁中に鳴いて、しばしば宸襟(しんきん)を悩まし奉る事ありけり。

註:「禁中」は皇居のこと。「宸襟」は、天子の心 のこと。

とあります。つまりこの第二回目の怪物こそが、「鵺(ぬえ)」なのです。そしてこれは、「化鳥」とありますから、鳥の化物ということになります。しかし、その外見についての描写はありません。

ではなぜ、第一回目の化物が「鵺」と呼ばれるようになったかといいますと、それはおそらく、世阿弥の「能」の影響だと思います。世阿弥は平家物語を基に、能を作ったのですが、その際に、第一回目の化物と第二回目の化鳥とを合体させて、「鵺」という一つの化物にしてしまったのです。但し、この能でも、頼政が射殺した鵺(ぬえ) についての描写では、

頭(かしら)は猿、尾は蛇、足手は虎のごとくにて、鳴く声 鵺(ぬえ)に似たりけり。

という風に、平家物語と同じく、「鳴き声が鵺(ぬえ)に似た化物。」となっています。しかしこの箇所以外では、この化物は鵺(ぬえ)として話が作られています。例えば、自己紹介の部分では、

頼政が矢先にかかり、命を失いし鵺(ぬえ)と申ししものの亡心(ぼうしん)にて候。

というような感じです。しかし能の世界ではどういうわけか、この矛盾については、ほとんど気にかけられていないようです。

鵺(ぬえ)は、色々な動物が寄せ集められているので、そこから転じて、「正体不明の人物やあいまいな態度」にも用いられるわけですが、この能の矛盾も、鵺らしい曖昧さと見ることができるかもしれません。

広辞苑では、この矛盾を解消するためか? 鵺の鳴き声を、「声はトラツグミに似ていたという。」というように、「鵺」という漢字を取り除いて、カタカナで、「トラツグミ」としているのですが、辞書なのですから、このような恣意的な変更はすべきではないと思うのですが、どうでしょうか?

註:鵺は、野鳥のトラツグミのことであるということは、定説になっている。後述を参照のこと。

時代が下がると、この世阿弥の能は、浄瑠璃や歌舞伎に更に翻案されて行きます。こうして、「鵺のように鳴く名前のない化物」は、「鵺という名の化物」へと変化して行ったのです。

源頼政鵺退治之図 画:一寿斎芳員 江戸時代の錦絵
源頼政の鵺退治

ところで、二度目の怪鳥の鵺(ぬえ)には、なぜその外見の描写がなかったのかというと、それには理由があります。本来、鵺(ぬえ)は、怪鳥ではなく、万葉集にも何度も出てくる鳥で、これはトラツグミのことだったのです。そして平家物語のこの話も、元々は、怪鳥の鵺(ぬえ)を射る話ではなく、単なる鳥の鵺(ぬえ・トラツグミ)を射る話だったのではないかと考えられています。その原型に近いのは次の話です。

十訓抄 10.57 頼政鵺を射し事

高倉院の御時、御殿の上に鵺(ぬえ・トラツグミ)の鳴きけるを、悪しき事なりとて、いかがすべきという事にてありけるを、或る人頼政に射させらるべきよし申しければ、さりなんとて、召されて参りにけり。このよしを仰せらるるに、畏まりて宣旨を承りて、心の中に思いけるは、昼だにも小さき鳥なれば得がたきを、五月の空、闇深く雨さえふりていうばかりなし。我、既に弓箭の冥加つきにけりと思いて、八幡大菩薩を念じて奉りて、声を尋ねて矢を放つ。答うるように覚えければ、よりて見るに、あやまらず当たりにけり。・・・・

つまり、「頼政が、雨降る闇夜に、鵺(ぬえ・トラツグミ)という鳥を、見事に射止めた。」という話だったわけです。

平家物語の二番目の話では、鵺(ぬえ)を、「化鳥」とはしていますが、基本的には、十訓抄の話と同じです。おそらく平家物語の作者も、鵺(ぬえ・トラツグミ)を「不気味な声で鳴く不吉な鳥。」というような意味合いで「化鳥」と表現したに過ぎないのだと思います。

そもそも当時は、鵺(ぬえ)は、トラツグミと認識されていたわけですから、文字通りの意味での化鳥にはなりえなかったのではないかと思います。
(平家物語では、二番目の話が先にあり、その後一番目の話が作られたのだと思います)

鵺は「和漢三才図会」 の禽類の項にも載っていますので、見てみます。

和漢三才図会 鵺 (ヌエ)

和名抄載唐韻云[ヌエ恠鳥也按俗或用鵺字此鳥昼伏夜出故然焉

按今世称鵺者非恠鳥而洛東及処処深山多有之大如鳩黄赤黒彪似鴟昼
伏夜出啼木杪其觜上黒下黄鳴則後竅応之声如曰休戯脚黄赤色也

和名抄に、唐韻を載て云うは、[ヌエ]は怪鳥也。按ずるに、俗或は、鵺の字を用ゆ。此の鳥、昼伏し夜出つ故然り。

按ずるに、今世、鵺と称する者は、怪鳥に非ず。而して、洛東及び処処深山に多く之れ有り。大きさ鳩の如し。黄赤色、黒彪 (くろふ) 鳶に似て、昼伏し夜出て木杪 (こずえ) に啼く。其の嘴、上黒く下黄。鳴く時は、則ち後竅(こうきょう) 之に応ず。声 休戯(ひゅうひい)と曰うが如し。脚 黄赤色也。

和漢三才図会は、正徳二年(一七一二)に作られたものですが、
「今世、鵺と称する者は、怪鳥に非ず。」
と、わざわざ記されているところを見ると、当時は既に、鵺は、怪鳥として広く知られていたことが窺えます。

実際のトラツグミの写真です。
トラツグミ ヌエ 鵺

和漢三才図会のイラストでは、首が長くなっていますが、それ以外の細かな描写は誤りはないと思います。
「鳴く時は、則ち後竅(こうきょう) 之に応ず。」
と、いうのは、鳴声にあわせて、お尻の穴を開いたり閉じたりする。というような意味でしょうか? トラツグミは、餌を探すときに、お尻を上下にフリフリするそうです。案外このことを指しているのかもしれません。

ところで、この前「攻殻機動隊 Ghost in the shell Movie」をBSでやっていましたが、あのテーマ曲には、鵺が出てきますよね。

謡 Making of Cyborg 作詞:作曲 川井憲次

吾が舞へば、麗し女、酔ひにけり
(あがまえば、くわしめ、よいにけり)

吾が舞へば、照る月、響むなり
(あがまえば、てるつき、とよむなり)

結婚に、神、天下りて
(よばひに、かみ、あまくだりて)

夜は明け、鵺鳥、鳴く
(よはあけ、ぬへとり、なく)

遠神恵賜
(とお、かみ、えみ、ため)

川井憲次氏は、らんま1/2の音楽も担当されていましたから、らんまファンには、おなじみの音楽家です。それにしても、この曲は、とても幻想的で印象的な曲ですね。ただ、この歌詞なのですが、

「夜は明け、鵺鳥、鳴く」

というのは、ちょっと・・・ 鵺鳥は夜中に鳴く鳥とすべきではないかと思うのですが。 夜が明けて鳴くのは、やはり、ニワトリでしょうね。(^^) でも、ニワトリでは、趣がないかもしれませんね。古事記などでは、ニワトリは、長鳴鳥 (ながなきどり) と呼ばれていたので、これならば、なんとかいけそうな気もしますが・・・(^^)

そういえば、らき☆すた の 16話で、つかさ のお姉さんのまつり が、
昔、鳥が死者を運ぶと考えられてて、その鳥が休むための木だから鳥居って言うみたいよ。

と言っていましたが、「鳥が死者の魂を運ぶ」という思想は世界的にポピュラーですが、「鳥居の由来は、死者を運ぶ鳥が休む木だから」というのは、それほど一般的な説ではないと思います。

伝説として有名なのは、先ほどの古事記の長鳴鳥の話ですね。アマテラスが、天岩戸に隠れてしまったので、彼女を呼び出すために、長鳴鳥 (鶏) をたくさん連れてきて、鳴かせたそうです。この、鶏を止めておいた木が、鳥居のはじまりだというのです。でも、「らき☆すた」の薀蓄班は、このくらいのことは、知っていたのでしょうね。おそらくここの鳥居の薀蓄は、その前に、つかさが、まつりに聞いた英文と関係しているのだと思います。

Curses, like chickens, come home to roost.
人を呪わば穴二つ
When you make the contract,
契約を結べば、
you will absolutely go to hell,too.
あなたも、必ず地獄へ流されることになる。

これは、地獄少女についての英文だそうですが、しかしこれを直訳的に読むと、
Curses, like chickens, come home to roost.
「呪いは、ニワトリのように、自分の止まり木に戻る」
When you make the contract, you will absolutely go to hell,too.
「契約を結べば、あなたも必ず地獄へ堕ちる」

この英文を意訳すると、まつりの、鳥居の由来の説明になると思うのですが、どうでしょうか? ちょっと苦しいでしょうか?(^^)

らき☆すた 16 リング
らき☆すた16リング

参照リンク
「鵺」の尻尾と「牛鶴鰻毛人」の尻尾
鵺から雷獣への変化

2007/08/08
posted by ranma at 06:23 | TrackBack(0) | らんま1/2-18巻 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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